多言語DTPの注意点 | 翻訳後の編集作業を解説

2024.10.16

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多言語DTPの注意点 | 翻訳後の編集作業を解説

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    魅力的なデザインのパンフレットや、購買意欲を引き出す工夫が凝らされたカタログなど、多言語翻訳のコンテンツは実に多種多様です。また体裁が整っているデザインは、読みやすさや分かりやすさの観点においても重要な要素の一つです。

     

    しかし、多言語翻訳の場合、元の言語と同じ体裁のデザインに仕上げるためには工夫が必要です。また、ターゲット言語によっては、元の体裁を再現することができない場合もあります。

     

    今回の記事では、多言語をテーマにしたDTP編集(レイアウト編集)について、注意点や翻訳会社ならではの対応をご紹介していきます。

     

     

    とらんちゃん

    ​DTPは、デスクトップパブリッシング(Desktop Publishing)の略だよ!翻訳工程の名わき役、ときには主役級でもある多言語DTPについて紹介するよ!

    なお、多言語翻訳の注意点やレイアウト編集についてまとめた関連記事もありますので、興味のある方はそちらもぜひご覧ください!

    多言語DTPで注意したい5つのこと

    多言語DTPイメージ

    「テキストだけ複数の言語に翻訳してもらって、DTP編集は後から自分でやるつもりでいたら、大変な苦労をした」というお話をお客さまから聞くことがあります。

    実はこれはとても重要なポイントで、ターゲット言語の知識が無い状態でのDTP編集は、文の意味が変わってしまう、誤った情報に変換されてしまう、などの問題が生じることがあります。

     

    言語ごとに柔軟な対応が求められるDTP編集には多くの注意点がありますので、今回はそのなかでも押さえておくべき点を5つ、ご紹介します。

    1.テキストの長さ

    多言語に翻訳するとテキストの長さが変わるので、元の言語でデザインしていた体裁に少なからず影響が出ます。

     

    ご存知の方も多いと思いますが、日本語から外国語に翻訳した場合、ほとんどの言語はテキストが長くなります。英語、多くのヨーロッパ圏の言語、ベトナム語、インドネシア語などにその傾向が見られます。

     

    また、英語から翻訳した場合、フィンランド語、ハンガリー語、ドイツ語、フランス語、ロシア語、タイ語、ミャンマー語などは、テキストが長くなることがあります。

    逆にテキストが短くなるケースとして日本語から中国語への翻訳が挙げられます。

     

    もちろん、語句によっては例外もありますが、オリジナルのデザインにピッタリ当てはまる翻訳文はなかなかありません。テキストの長短に合わせて、言語ごとにデザインを組み直していると、追加のコストがかかるため、多言語DTPでカバーする必要があります。翻訳後のテキストをオリジナルのデザインにうまく合わせて調整する技術や知識が必要という点に注意しましょう。

     

    なお、事前に翻訳することが決まっている場合は、ターゲット言語を収容できるスペースを考慮した上でオリジナル言語のデザインを組むなど、前もって工夫できることもあります。

    2.フォント

    言語によって最適なフォントは異なります。またインストールが必要なフォントもあります。もし、ターゲット言語に適応したフォントがインストールされていない場合、正しく表示されず、文字化けが起こってしまいます。

     

    例えば中国語繁体字の場合、SimHeiフォントを使用してDTP編集するケースがありますが、MicrosoftのWindows 11では、出荷時にプリインストールされているフォントの中にSimHeiフォントは含まれていません。

    ですので、SimHeiフォントを使用する場合は、オンデマンド機能(Feature On Demand (FOD) )として用意されている補助フォント(Supplemental Fonts)のパッケージを追加する必要があります。

    3.読む方向

    右から左に読まれる言語の代表例に、アラビア語、ヘブライ語があります。しかし、元の言語に合わせて、左から右に読むことを想定してデザインが組まれていた場合、翻訳後のDTP編集では特別なPC設定や、ターゲット言語を理解した上での細やかなテクニックが必要です。

     

    • オリジナルのデザインから反転するように組み替えていく作業
    • 挿入図、写真、フローチャートなどの順序確認と配置変更
    • アラビア数字「۱ ۲ ۳」などへの対応
    • 翻訳後の文章に英単語や英数字が含まれる(左から右に読む言語が含まれる)場合の正しい語順の判断
    • 適切な改行位置、発音記号への配慮 など

     

    元の言語で写真を時系列で配置していた場合、正しく組み換えないと時系列が逆転してしまう、なんてこともありますので、誤った情報とならないよう、慎重にデザイン全体を確認しましょう。

     

     

    右から読む言語例(一例)

     

    • アラビア文字:アゼルバイジャン語、アラビア語、ウイグル語、ウルドゥー語、カシミール語、クルド語、ペルシア語
    • ヘブライ文字:ヘブライ語、イディッシュ語
    • シリア文字:アラム語、シリア語
    • ターナ文字:ディベヒ語

     

    また、縦にも読める言語として、日本語、中国語、モンゴル語が挙げられます。オリジナルのデザインが縦に読む想定で組まれていた場合、ターゲット言語によっては、テキストを縦に配置することが難しくなるため、注意が必要です。大幅な工数増加や事前の細かな打ち合わせが必要になる場合がありますので、気をつけましょう。

    4.行間、文字間隔の調整

    行間が広い例と狭い例での比較を見てみましょう。行間が広い例は、改行を1回入れただけの2文ですが、2つの間には広いスペースが有り、離れていることが見て取れます。

    また、行間が狭い例では、文字の一部が重なり切れてしまっているため読みにくくなっています。

     

    行間が広い例:

    行間広い

    行間が狭い例:

    行間狭い

    このようなことは多言語翻訳でも起こります。アラビア語、ヒンディー語、ミャンマー語、ラオス語、タイ語、クメール語、チベット語、などは、行間を広く取る必要があるため、翻訳後のDTP編集には注意が必要です。

     

    また文字間隔にも配慮しましょう。文字間隔が広すぎると文字がバラバラに見え、狭すぎると文字が詰まって見えてしまうため、文字を置くバランスが重要です。

     

    文字間隔が広い例:

    文字間隔が広い例

    文字間隔が狭い例:

    文字間隔が狭い例

    5.言語ごとの表記ルール

    「多言語翻訳の基本」という記事でもご紹介しましたが、表記ルールの知識は「多言語DTP」においても必須です。桁区切り、小数点、引用符、記号、ハイフネーションなど、言語ごとに異なるルールがあります。判断が難しいケースも多くありますので、多言語翻訳の場合は、翻訳会社にDTP編集を含めて相談することをおすすめします。

    桁区切り、小数点、引用符や記号など、多言語のサンプルをもとに解説した記事がありますので、興味のある方はぜひご覧ください。

    とらんちゃん

    納期、コスト、品質のベストバランスのためにも、まずはプロへ相談することが一番の近道だよ!

    番外編:まだまだ知りたい言語の世界

    ここからは番外編です。奥が深い言語の世界を少しだけ覗いてみましょう。

    改行位置に注意!タイ語、ラオス語、クメール語など

    多言語イメージ

    タイ語やラオス語、クメール語には、英語のように単語の区切りに空白を入れる「分かち書き」という概念がなく、句読点もありません。文章の句読点を示すためにはスペースが使用されます。なお、数字の場合は句読点が使用されますので、文章と数字とでは句読点の扱いに注意が必要です。

     

    また、文章や単語の区切り位置をきちんと理解していない場合は、改行を入れることは避けた方が良さそうです。見栄えを気にするがあまり、つい改行でスペースを調整してしまいがちですが、これらの言語に関しては、改行の位置で文の意味が変わってしまうということも起こります。つまり、誤った改行を入れることで、誤った情報に変換されてしまうのです。

     

    下の例は、タイ語で「どうもありがとうございました」という意味の文章です。DTP編集の過程で文中に改行を入れたい、となった場合、どこの位置で改行を入れたらよいか、みなさんは分かりますか?

    タイ語改行なし

     

     

    正解は、下記の赤い矢印の位置です。
    この位置で改行すると、2行に分かれても「どうもありがとうございました」という意味となり、正しく伝わります。もし、こことは異なる位置で改行した場合、文の意味が変わってしまったり、誤った改行によりスペルミスとなってしまう場合があります。

    タイ語改行あり

    多様性にあふれたインド言語

    インドには非常に多くの言語が存在するのをご存知ですか? インド憲法で制定されている公認言語の数は22言語ですが、日常生活では約850もの言語が使われているそうです。翻訳センターでも、公用語であるヒンディー語をはじめ、多くのインド言語の翻訳依頼をいただいています。

    一例として、ベンガル語、ネパール語、サンスクリット語、タミル語、ウルドゥー語、テルグ語、マラーティー語、グジャラート語、マラヤーラム語、カンナダ語などの専門的なドキュメントや公的機関が発行した書類などの翻訳・DTP編集に対応した実績があります。

    とらんちゃん

    とらんの胸ポケットに入っている単語帳には、たくさんの言語が書き込まれているよ!

    まとめ

    いかがでしたか。世界中の人に「伝わる」情報を発信するために、「多言語DTP」は大変重要な役割を担っています。翻訳センターでは、翻訳会社ならではの対応力とノウハウを活かして、注意点が多い「多言語DTP」案件に日々取り組み、お客さまから信頼をいただいています。

    「この言語はお願いできるかな?」と思った時は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

    ここまでお読みいただきありがとうございました。

     

    ※言語のルールは地域や方言によって多様であり、本記事で紹介した内容はその一部です。特定の言語によっては、記載内容とは一致しない場合があります。

    翻訳センター インサイドセールスチーム

    とらんちゃん

    とらんちゃん

    「とらん」だけに「トランスレーション(翻訳)」が得意で、世界中の友達と交流している。 ポケットに入っているのは単語帳で、頭のアンテナでキャッチした情報を書き込んでいる。

    • 生年月日1986年4月1日(トラ年・翻訳センター創業と同じ)
    • モットー何でもトライ!
    • 意気込み翻訳関連のお役立ち情報をお届けするよ。

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