米国特許の最新事情 | DOCX形式の導入と方式拒絶の事例

2025.2.26

  • 翻訳あれこれ
米国特許の最新事情 | DOCX形式の導入と方式拒絶の事例

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    海外で特許を出願する際、出願人や特許事務所は、「特許査定を受けるため」または「拒絶を受けることを避けるため」、特許翻訳における工夫を日々考えています。そうした工夫は特許翻訳のトレンドにも影響し、トレンドの変化は出願人や特許事務所を悩ませることがあるようです。

    今回は、最近お問い合わせが増えている米国特許商標庁(USPTO:United States Patent and Trademark Office)での形式変更や翻訳の指摘に関して取り上げます。

    とらんちゃん

    同じ悩みを持ってこの記事にたどり着いた人も多いんじゃないかな?
    このブログが参考になったらうれしいな!

    米国出願について

    米国は世界最大の市場の一つです。この大きな市場で独占的な権利を取得するため、企業はこぞって特許の取得に力を入れています。また、競合他社による同じ発明の使用や、自社の製品やサービスの模倣を防止する役割もあり、戦略的に特許を取得することも必要とされています。

    市場が大きいということはつまり、米国で特許を取れば国際的な信頼性が増し、自社の製品やサービス、技術が認められやすくなると言えます。

    日本から米国への特許出願

    日本から米国への特許出願数については、ここ10年で年々低下しており、2013年には約85,000件(特許行政年次報告書2023年版 1-1-18図より)であった出願数が、2023年には約73,000件(特許行政年次報告書2024年版 1-1-18図より)まで減少しています。

    また米国への特許出願のみならず、2013年以降横ばいで推移していた海外への特許出願数は、2020年以降は減少傾向にあります(特許行政年次報告書2024年版 1-1-28図より)。この減少の理由として、企業の中での出願コストの削減や世界的なインフレなどの経済的要因に加え、オープンイノベーションのような特許戦略・出願目的の多様化といった戦略的要因が考えられます。

    それでも、米国外の出願人によるUSPTOへの特許出願・登録件数は依然として日本の出願人によるものが多く(特許行政年次報告書2024年版 1-1-22図より)、日本企業にとって米国は非常に重要な市場と位置づけられています。

    例えば、企業がビジネスを展開する機会、発明によって資金調達を行う機会、その他企業とのビジネスチャンスを得られる機会など、さまざまなチャンスが増えることにつながります。

    特許を取るための工夫や対策

    各企業には経済的、戦略的観点から、出願する特許を絞る傾向が見られます。

    それだけに企業としては、確実に外国で特許を取得できる工夫や対策を行うことになりますが、翻訳センターでもそのお手伝いができるよう、翻訳品質の向上を目的とした、さまざまな取り組みを実施しています。

     

    特にUSPTOへの出願の場合は独特なルールがあり、さらにそのルールにも流行り廃りがあるようです。それらのうち、最近の米国特許でのトレンドをご紹介します。

    とらんちゃん

    翻訳センターの品質管理については過去にも紹介しているよ!
    興味があれば、ぜひ読んでみてね!
    安心の品質管理!特許翻訳の検品工程とアフターフォロー

    昨今の米国特許におけるトレンド

    DOCX形式の導入について

    USPTOは、2024年1月17日より、明細書、クレーム、要約書などの特許出願書類をDOCX形式で提出することを義務付けました。PDF形式で提出する場合は追加料金が発生します。サポートされているフォントも限定していることから注意が必要です。なお、現時点ではバックアップを目的としたPDF形式での書類提出は引き続き認められています。バックアップ用PDFの提出に料金は発生しませんが、DOCX形式でのファイル提出と併せて行うことが必要です。

    この新しいルールはパリルート出願にのみ適用され、PCT国内移行案件や仮出願、図面は対象外です。

    USPTOがDOCX形式を導入した目的は、出願書類のデジタル化を進め、審査プロセスを効率化し、エラーを削減することにあります。これにより、PDF変換時の文字化けやフォーマットの不備がなくなるなどの効果が期待されています。

    USPTOのWEBサイト(英語)には、DOCX形式の明細書をチェックする機能がありますので、特許出願書類を現地代理人に送付する前に確認しておくことをおすすめします。

    とらんちゃん

    DOCXファイルとはMicrosoft社の「Microsoft Word」の標準ファイル形式の一つだよ。Microsoft Word 2007以降で標準的に使用されるファイル形式で、拡張子は「.docx」だよ。Google Docs、Office Online、LibreOffice、Apple社のPagesもDOCXファイルの範疇に入るみたいだよ!

    方式拒絶(補正指令)の事例

    米国へのPCT国内移行案件の英文明細書では、方式拒絶(補正指令)が発行されることがあります。方式拒絶(補正指令)とは発明に直接関与しない事項に関するものを指します。ここで具体的な例を2つ、ご紹介します。なお事例はいずれも国際公開公報の記載を元にしています。

    <具体例1> 発明の名称の翻訳不足

    (原文)発明の名称:Aの製造方法

    (英文)Method of Manufacturing A

    英文では「発明の名称:」の部分が翻訳されていないとして、補正指令が出されることがあります。

    この場合、下記英文へ修正し、明細書を再提出する必要があります。

    (英文)Title of Invention:Method of Manufacturing A

    <具体例2> 請求項の翻訳不足

    (原文)請求項 1

    (英文)1.

    こちらも<具体例1>と同様、原文どおりに翻訳されていないとして、補正指令が出されることがあります。

    この場合、下記英文へ修正し、明細書を再提出する必要があります。各請求項も同様です。

    (英文)Claim 1

    上記の通り、発明に直接関与しないことで補正指示が出た事例があります。特許出願人は、翻訳の正確さに十分注意を払い、米国特許規則に準じた形式で書類を提出すことが大切です。

    まとめ

    このように、USPTOでは不定期に出願の形式変更や方式拒絶の新たな基準を設けるケースがあります。

    翻訳センターでは日頃からUSPTOの動向を注視しており、この記事で述べた2点についてももちろん対応しています。USPTOの最新のトレンドを押さえた翻訳文を納品しますので、ご安心ください。

    特許翻訳業界のリーディングカンパニーとして、特許翻訳の新たなトレンドをいち早くご紹介できるよう、引き続きアンテナを張って情報収集に努めます。

    ここまでお読みいただきありがとうございました。

    ※Microsoft Word、Office Onlineは、Microsoft Corporation の米国およびその他の国における登録商標または商標です。その他記載の会社名および製品名は、各社の登録商標または商標です。

    翻訳センター 特許営業部

    とらんちゃん

    とらんちゃん

    「とらん」だけに「トランスレーション(翻訳)」が得意で、世界中の友達と交流している。 ポケットに入っているのは単語帳で、頭のアンテナでキャッチした情報を書き込んでいる。

    • 生年月日1986年4月1日(トラ年・翻訳センター創業と同じ)
    • モットー何でもトライ!
    • 意気込み翻訳関連のお役立ち情報をお届けするよ。

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