お客さま事例 | テルモ株式会社 知的財産部
テルモ株式会社
- 業 種:
- 精密機器
- 事業詳細:
- 医療機器・医薬品の製造販売
- 従業員数:
- 5,554名(テルモグループ 30,591名: 2024年3月末現在)
- ご担当者:
- 知的財産部 中野氏 江畑氏
1921年に北里柴三郎博士をはじめとする医師らが発起人となり、良質な体温計の国産化を目指して設立された医療機器メーカー。
100年以上の歴史の中で、「医療を通じて社会に貢献する」という企業理念のもと、高品質な製品とソリューションを、世界160以上の国や地域の医療現場や患者さんに向けて提供している。
翻訳管理システムおよびAI翻訳活用による品質・納期・コストの最適化
テルモ株式会社の知的財産部は、特許、商標、意匠についての国内外調査、出願、登録手続きを通じて、イノベーションの価値と、無形資産である知的財産を法的に守るという重責を担っている。また、他社の知的財産権を尊重するべく、知的財産権の調査や設計回避等の対策を講じ、さらには技術や知的財産に関わる契約業務を受け持っている。
国内外の特許出願を担う同部では、翻訳作業による負担も大きく、品質・納期・コストの最適化を課題としていた。翻訳センターが提供する、翻訳管理システム(※1)およびAI翻訳(※2)の活用による品質・納期・コストの最適化を進める同社に話を聞いた。
※1 翻訳管理システム:翻訳者の業務効率化と翻訳の品質向上を支援するために使うソフトウェアのこと。翻訳作業を進める中で翻訳メモリを蓄積することができる。翻訳支援ツール、CATツールと呼ばれることもある。
翻訳支援ツール(CAT)の有効活用
※2 AI翻訳:本資料ではニューラル機械翻訳(NMT)エンジンを搭載したものを指す。翻訳管理システムは、AI翻訳の訳文を表示させることが可能なため、作業者は翻訳メモリとAI翻訳の両方を参照できる。翻訳メモリを適用しない文章に対しては、AI翻訳が出力した翻訳結果を適用することで、一から翻訳する必要が無くなる。
抱えていた課題
同部で、血液・細胞テクノロジーカンパニーや再生医療の知財活動を担当し、外国出願検討会の事務局を務める江畑氏はこう語る。
「コンピュータによる翻訳機能が向上すると共に、翻訳をデータベース化できるなどの環境が整ってきているなかで、品質・納期・コストの最適化について検討しました。翻訳メモリ(※3)やシステムについて、存在は認識していたものの、細かいところまでは把握していませんでした」
品質・納期・コストの最適化を検討していた当時について、同部で企画管理グループ長を務める中野氏は当時をこう振り返った。
「弊社の調達部経由で、他部門において翻訳センターによる最新の翻訳サービスの導入成果が出ているという話を聞いておりました。新しい技術を取り入れて、コストを最適化できないか、知的財産部としても検討を進めていたため、まずは話を聞いてみようということになりました」
※3 翻訳メモリ:原文と翻訳文をペアで蓄積したデータベース。
テルモ株式会社 江畑氏
サービス導入の理由
翻訳管理システムにおける翻訳メモリの仕組みやその活用について、理解を深めていった両氏。
導入を決めたポイントについて江畑氏は、「やはり翻訳メモリのところがポイントになってきますから、翻訳センターのサービスを利用することを決めた理由もそこが大きかったです。提案には、翻訳メモリを活用し、同じ表現はそのメモリから呼び出して使用できる点などが含まれていました。品質と納期を維持、向上しつつ、さらにコストについても最適化できるのではないかと感じました」と、振り返った。
また中野氏は、「翻訳センターからの提案の中で、AI翻訳を使いますよ、メモリを蓄積して活用しましょう、などという話がダイレクトに出て来ました。あまり他のベンダーさんからは出てこない内容でしたので、やはり最新のサービスレベルでやっているのだろうな、という印象を受けました」と話す。
江畑氏は、実際に作業を担当する翻訳者/校正者の教育にも着目していた。「最新の体制で翻訳サービスを提供することにおいて、翻訳者さんがツールを駆使できるように教育をしている点は、先を見据えた事業展開をしている印象を受けました」
翻訳管理システムやAI翻訳などの最新のテクノロジーは、それらを使いこなす「人」が要となる。翻訳センターが長年に渡り蓄積した翻訳管理システム活用のノウハウを、パートナーであるフリーランスの翻訳者や校正者へ共有し教育に注力している点も評価された形だ。
加えて、翻訳センターでは外部委託先の機密保持対策にも注力している。フリーランスの翻訳者/校正者など外部委託先となる作業者は、秘密保持義務条項を盛り込んだ業務委託契約書の締結、情報管理マニュアルの遵守同意および遵守状況の定期申告が必須となる。また、情報管理やセキュリティに関連する研修の実施など、さまざまな機密保持対策に取り組んでいる。
「翻訳メモリがポイント」と語る江畑氏(左)と、「最新のサービスレベルだと感じた」と語る中野氏(右)
導入後実感したこと
人とテクノロジーとの融合で、人の作業を効率化しつつ翻訳品質・納期・コストの最適化が実現できる点について、自身でも翻訳を担う江畑氏はこう語る。
「特許では、やはりクレーム(請求項)部分の翻訳品質がとても重要になってきます。翻訳センターのサービスでは、きっちりと人の目が入って確認されていることがわかりましたので、特に大きな心配はなかったです。ツールや機械だけで済ませるのではなく、その後に人の手が入る、この人による作業もツールで効率化されている、という印象です」
AI翻訳が出力した翻訳結果は、翻訳者によって修正・再翻訳されるため、あくまでも「人」が適切な訳文を判断し翻訳を完成させる、という点がポイントとなる。
翻訳管理システムでの翻訳メモリや用語集の運用はすべて翻訳センター側が行うため、同社側の負担を軽減できる。
「今までと変わらない依頼方法で、翻訳管理システムやAI翻訳を活用した明細書翻訳を依頼できる環境を用意いただきました」と江畑氏は言う。
翻訳センターができること
翻訳センターでは、翻訳管理システムによる品質・納期・コストの最適化は、単に翻訳サービスの提供だけではなく、文書管理の在り方や翻訳メモリなど言語資産の有効活用に貢献できる総合言語サービスと位置づけている。人が最新のテクノロジーを最大限に使いこなす仕組みを構築し、生産効率の向上、翻訳品質の安定を実現したものだ。さらに、用語集の構築と運用、企業または部署ごとにカスタマイズした翻訳ソリューションの提供が、品質・納期・コストの最適化を後押ししている。
「再生医療などの新しい分野に関して、社内にデータの蓄積があります。専門用語もそうですが、そのような用語やメモリ用のデータなどを我々から翻訳センターへ提供することで、ツールに組み込むことができ、より良い翻訳ができる形になればいいな、と思っています。実際にスタートしているものもありますし、これまで蓄積された翻訳メモリからリサイクルできているという実感はあります」(江畑氏)
同社の文書資産が、翻訳センターによって言語資産化されていくことで、翻訳管理システムやAI翻訳の活用から享受できるメリットを最大化していく。
※ 記載の内容は2024年9月現在のものです。予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。
※ 記載の会社名および製品名は各社の登録商標または商標です。