事例紹介

お客さま事例 | オリンパス株式会社 R&D Product Cyber Security

オリンパス株式会社

業  種
精密機器
事業詳細
医療機器(内視鏡、治療機器)の製造販売 
従業員数
2,834名(オリンパスグループ 28,838名:2024年3月末現在)
ご担当者
蔦木氏 Rutz氏 星野氏

オリンパス株式会社は、1919年に顕微鏡の国産化を目指して創設され、1950年には世界初の実用的な胃カメラを開発した。創立100周年にあたる2019年には、企業変革プラン「Transform Olympus」を発表し、光学機器メーカーからヘルスケア領域に注力したグローバル・メドテックカンパニーとして進化を続けている。現在では、内視鏡事業と治療機器事業の2つの事業を通じて、医療の発展に寄与するため、生産性の向上とイノベーションに取り組んでいる。

オリンパス株式会社

AIナレーション×ポストエディットで実現|納期も品質も妥協しない研修動画制作

医療機器においては、セキュリティインシデントが患者さんに直接危害を及ぼす可能性があるため、医療機器のセキュリティ確保のための法令整備や国際協調が進められており、医療機器メーカーでは各国・地域の法規制やガイドラインに沿った製品セキュリティの強化が必須である。
オリンパス株式会社 R&D Product Cyber Security部門は、グループ全体のR&D機能において製品セキュリティの強化に関わる戦略を策定・推進する重要な役割を担っている。同社が何よりも優先する「患者さんの安全」を実現すべく、R&Dエンジニアを対象としたセキュリティ教育の推進に取り組んでいる蔦木氏、Rutz氏、星野氏に話を聞いた。

左から順に、オリンパス株式会社 Rutz氏、星野氏、蔦木氏

左から順に、オリンパス株式会社 Rutz氏、星野氏、蔦木氏

工期短縮と品質確保の両立への挑戦

同社は、英語で用意された膨大なR&Dエンジニア向けのセキュリティ研修資料を、短期間かつ低コストで翻訳し、ナレーション吹き替えまで実施する計画を進めていた。

本プロジェクトの主担当である星野氏は、「弊社にとっては初めてのグローバル統一の製品セキュリティ教育ということもあり、開発者のセキュリティに関する基礎知識やスキルを底上げすることが一番のミッションでした」と話す。
対象となる研修は、合計65本のトレーニング動画で構成されており、時間にして18時間にも及ぶ。翻訳だけでなく、ナレーション吹き替えによる動画化にも対応するため、作業には相当な時間を要することが見込まれた。

また、納期の短縮が大きな課題であると同時に、受講者の理解を促す品質も求められた。星野氏は「手戻りを最小限に抑えつつ、期限内に十分な品質を確保する必要があり、非常に悩みました」と振り返る。

サービス概要と翻訳センターを選んだ決め手

AIナレーション×ポストエディットのAI技術ソリューション

本プロジェクトでは、大きく分けて2つの作業を翻訳センターが担った。「英語から日本語への翻訳」と「ナレーション吹き替えの挿入による動画化」である。その中で一番の課題である短納期を実現するためには、動画化の納期短縮が最大の鍵となる。

人によるナレーションでは、ナレーターやスタジオの確保、収録などに時間とコストがかかる。そこで、音声合成技術を活用した「AIナレーション(※1)」を提案。AIナレーションの検討が初めてだったという星野氏は、「事前にサンプルを確認した上で、トレーニング動画のナレーションとして有用であり、人のナレーションに近い品質であることを評価しました」と話す。翻訳センターのAIナレーションサービスは、動画と音声のタイミング調整のみならず、翻訳会社の強みである専門知識を持ったネイティブ作業者のチェックにより、品質要求にも応えることができる。

また、本プロジェクトの翻訳方法であるポストエディット(※2)も、AIを利用した先進的な翻訳サービスだ。この「AIナレーション×ポストエディット」というAI技術ソリューションによって、短納期とコスト削減を実現した。

さらに決め手となったのは、製品セキュリティ教育における過去の取引実績と、専門知識を持つ作業者の対応力だ。
これまでも十分な取引実績があり、オリンパスグループの社内用語やエンジニアリング領域特有の技術用語に精通していると判断し、翻訳センターに依頼しました」(星野氏)

オリンパス株式会社 星野氏

ソリューションの有用性について語る星野氏

※1 AIナレーション:音声合成技術で作成した機械音声のナレーションをPowerPointに挿入し動画化するサービス。
日本語・英語・中国語をはじめ、多言語対応が可能。
多言語AIナレーション

※2 ポストエディット:機械翻訳(MT)によって生成された翻訳文を人間が確認し、手直しする作業。
ポストエディット(PE)サービス

プロジェクトの進行フロー

本プロジェクトの進行は以下の通りである。

  1. 入稿されたファイルから順次翻訳作業を開始
  2. 翻訳完了後に一次納品し、オリンパス株式会社でのチェックを実施
  3. チェック完了後のファイルにAIナレーションを挿入
    ※独自開発ツールでAIナレーションの生成および挿入を行い、ネイティブ作業者(本件では日本人)による専門用語や固有名詞の読み方や発音チェックを一貫して対応
  4. 完成したファイルから納品し、オリンパス株式会社にて順次研修をスタート

各トレーニング動画を優先度に応じて複数のグループに振り分け、そのグループ毎に1~4のフローを並行して実施した。翻訳センターの豊富なリソースとプロジェクトマネージャ(※3)の工程管理力により、翻訳と動画化を並行して行う徹底した工程設計が実現した。

※3 プロジェクトマネージャ:翻訳プロジェクトにおいて依頼から納品までの全工程を管理・調整する役割を担う。プロジェクトごとに最適な作業者(翻訳者・校正者・DTPオペレータなど)の選定・手配も担当。

翻訳(ポストエディット)
翻訳(ポストエディット)
一時納品
一時納品
チェック・修正対応
修正対応
AIナレーション制作
AIナレーション制作
最終納品
最終納品

納品後の印象やフォローアップ対応

本プロジェクトの納品後、星野氏はこう振り返った。
「AIナレーションとポストエディットの組み合わせにより、コストを抑えつつ、作業日数も大幅に短縮できました。AIナレーションの品質もよかったです」

さらに、「細かいコンテンツの更新やナレーションの変更など、納品後に発生した小さな修正にも期限内にしっかり対応いただいたことは非常に助かりました。この変更作業もAIナレーションを採用していたからこそ、工期の短縮が実現できたと考えています」と話す。人のナレーションの場合、再収録となればナレーターやスタジオの再手配が必要となり、短納期での修正対応は難しい。本プロジェクトでは納品後の修正工程においても、AIナレーションの特性が活かされ、さらに迅速な対応を可能にした。

今後の課題

AIナレーションは納期とコストを大幅に削減できる反面、人間のナレーションが持つ感情の豊かさや繊細なニュアンス、研修内容に合わせた抑揚の再現には限界がある。

この溝を埋めるため、星野氏は「レビューの精度を上げることが重要です。日本語としては間違っていなくても、ナレーションを聞くと違和感があったり、内容が分かりにくい部分がありました。レビューリソースが限られていたため、こうした問題を確実に抽出することは難しいと感じました。複数人でレビューをする場合は事前にレビュー基準も定めなければいけないと思っています」と、レビュー体制の重要性について指摘する。

また、受講者の理解に大きく影響する抑揚の改善や翻訳時の配慮についても意見交換している。

「長時間の研修になると、AIナレーションは単調に感じるというフィードバックを受講者から受けました。より自然に感じられるように、AIナレーションにもっとバリエーションがあったらいいですね。また、翻訳する際の改善点としては、同じ訳語を連続して使用するのではなく、敢えて別の表現に置き換えるなどの工夫も有効だと思います」(Rutz氏)
研修ナレーション用の動画翻訳の場合、より受講者に伝わる翻訳とするため、同じ意味ではあるが敢えて違う訳語を使うなど、今後意識的に工夫できる点が見えてきた。

「単調さを改善する他の工夫として、長文で関係代名詞や接続詞がある場合、なるべく文を区切って訳すほうが理解しやすくなると感じました」(星野氏)
翻訳工程では、最終的に「声に出して読まれること(音声合成工程)」を意識し、簡潔な訳文にする必要がある。

翻訳センターができること

「今後も双方で課題を共有して、より分かりやすいコンテンツを作っていきたい」と話す星野氏。同社では、今回制作したトレーニング動画のアップデートや新規コンテンツの追加を検討している。次回以降、課題として指摘されていたレビュー基準の設定ができれば、翻訳・ナレーション工程での留意事項として作業者にフィードバックでき、レビュー自体の負担を軽減することができる。双方向の好循環を生み出すため、翻訳センターとしても積極的な連携を考えている。

また星野氏は、「グローバル展開を目指し、多言語対応の可能性も視野に入れています」と続ける。翻訳センターのAIナレーションは40言語に対応可能。多言語対応は強みの一つでもある。

翻訳センターができること

「エンジニアが理解できることが一番。より精度の高い機械翻訳やより自然で分かりやすいAIナレーションの提供を期待しています。患者さん第一なので、そこにすべてが繋がる」と述べる蔦木氏。グローバルに活動する企業を支える我々翻訳会社には、今後も技術領域に関するナレッジを蓄積し、高品質な翻訳とナレーションを提供し続けることが期待されている。「患者さんの笑顔のため」 ― 翻訳センターは、今後も同社の熱い想いの実現を一丸となって支援していく。

※   記載の内容は2024年11月現在のものです。予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。

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